五台山


太極拳


太極拳に興味のある方に


抱虎帰山

(虎を抱いて山へ帰る)


 私の名前は張学峰です。
女性か男性かと考えられて、中国でもよく男性と間違われました。
虎年に生まれたからです。山が虎のお家だからです。これは太極拳の中の一つの動作「虎を抱いて山に帰る」と同じ意味です。
この山が付いている字を学と並び、学習の峰のほうへ向かう期待で両親がこの名前を付けたそうです。私が小さいころから勉強が好きなのは、この名前の御蔭であるかもしれません。
私は、日本に来る前に中国で二十年近く日本語の教師を務め、(日本人ではないですが、)日本語と日本文化を一生懸命に中国の人たちに教えていました。数千人を教え、その中には、日本に留学、研修、就職する人が二、三百人以上います。ですので、日本に来たら、是非中国語、中国文化を伝えたいなあと思いました。これも、「虎を抱いて山に帰る」の発想と同様です。
私の出身地は中国山西省です。
山西省は内陸省です。多分あまり知られていないところだと思ったら、横浜日中友好協会が1999年に山西省横浜王村希望小学校を開校したことが分かりました。とても素晴らしいことです。
この度、横浜日中友好協会と出会えたことも故郷からの縁ではないかと思います。更にみなさんのご理解を深めるために、ここで簡単に私の故郷を紹介させていただきます。

山西省は略称が晋、省都が太原、中国北部、黄土高原の東部、黄河流域の中部に位置しています。面積は15万6000平方キロで、人口は約3,393万人。漢民族を中心に、回、蒙古、満州族等の少数民族が住んでいます。気候は、大陸性気候に属しています。省南東部の大行山脈が海風をはばむために華北の他の地域に比べて気温が低く乾燥しています。冬寒夏暖、四季の変化が明瞭で、省内の南北で気候の差が大きいです。また、『石炭と鉄の里』といわれるほど、豊富な地下資源に恵まれています。石炭埋蔵量は全国埋蔵総量の3分の1の2612億トンに達することが明らかになっております。鉄鋼、重機、自動車、化学工業が発達し、麦、トウモロコシ、高粱、柿、葡萄などの生産も盛んです。特産としては平遥の牛肉、沁州の粟、稷山と運城の棗、清徐の葡萄・原平梨・陳酢、長治の党参、杏花村の汾酒と竹葉青酒などが有名です。
山西省は中華民族発祥地の一つであり、襄河丁村人遺跡と陽高許家窟で発見された古代人の人骨は、それぞれ旧石器時代中期十万年前までさかのぼります。春秋時代には中原の雄国・晋国に属し、それが山西省を表す「晋」の由来となりました。中国の国に存在する唐代以前の文物の三分の二以上が山西省にあると言われています。日本人に知られている唐代では、傑出した詩人王維や中唐の詩人白居易などの人物を輩出しています。
いわゆる、日本の方にも良く知られている「三国志の英雄・関羽、刀削麺の故郷、浄土宗や京劇や囲碁の発祥の地」なども、我が山西省なのです。
そして3つの世界文化遺産「雲崗石窟と平遥古城と五台山」や中国の「古代建築物の地上遺跡の70%」が山西省にあります。また、五岳の一つ北岳・恒山、黄河壷口瀑布なども有名です。このように、遺跡の宝庫でもあるところです。

中でも、私が特に紹介したいのは、中国四大仏教聖地の山西省のシンボルにもなる五台山です。
五台山は中国仏教で文殊菩薩の聖地、地形は「釈迦の掌」と比喩されます。五本の指は五つの嶺です。それに囲まれた手のひらに三百を超える寺院が建立され、巡礼の人々が寺から寺へと経巡り、全山を荘厳さが包んでいました。釈迦の教えが伝わり八百年。唐の時代は中国仏教のひとつの頂点でありました。それから更に千二百年。今では、観光ホテルが建ち、巡礼に代わり観光客の群が寺を廻るようになりました。
五台山は国定の風景観光地であり、ここは仏教を背景にした多くの人文景観があるばかりでなく、美しい自然の景色をも持っています。全観光区には47ヶ所もの古代の寺院があり、そのうち、南禅寺と仏光寺は唐代に建立され、中国で現存する最も古い木造の建築物であります。また、これらの寺院は、中国の古代宗教と宗教芸術の発展の歴史を表しているほか、古代の建築芸術の成果をも物語っています。更に五台山には、いたるところに不思議な形をした峰や岩があり、すべてが草木で覆われ、山も頂上には常に雪は積もることから、夏にここを訪れてもかなり涼しく、素晴らしい避暑地になっています。
私が生まれたのは五台山のふもとの陽泉市に属している盂県です。というわけで、私は自分の故郷が大好きです。

山西省は太極拳の発祥地の一つです。横浜日中友好協会の方々が太極拳の愛好者が多いと聞いて嬉しく思います。そこで、太極拳の話をしたいと思います。三百年前、山西省出身といわれた王宗岳著の「太極拳経」のおかげで、山西省では今までも楊式太極拳が盛んです。
 では、太極拳は何でしょう。まず 太極図
を見てみましょう。太極図では円の中で陰と陽がからみあうように回転し融け合っています。似ているが同時に全く対照的な二つのエネルギーが「一つになって」動いています。黒の中に白い点が、白い魚の形の中には黒い目があります。一つの円がこのように分割されているのは、統一の中に二重性と二極性そして対称性があることを示しています。ある意味ではまさにこれは白い魚と黒い魚の交尾です。結合であり、流動する相互作用です。それは二つの力、男と女、心と体、呼気と吸気、陰と陽の終局である完成です。これは生きていく上で非常に重要なことです。太極拳は、二極の間の流れを回復することにより、あなたが如何にバランスを崩しているかということを教え、再び中心に帰る手助けしてくれます。
太極拳の中の「抱虎帰山」のモチーフに、擠式、按式がありますが、いずれもみんな丹田(お腹にあるツボ)から吸い、そこで吐くことです。は、掬いあげた息を吸いながら、体の重心を左足に移動、両手で円を描いて戻ってきて、少し沈み込んだエネルギーを受け止めるように重心を落とします。「地人合一」になります。擠式は丹田から気を湧き出すように吸って、左手を右手首に当てて脈を診るように重心を右に戻りながら、気が背骨を通して百恵(頭の上にあるツボ)に上がる同時に、両腕の輪のエネルギーが増大し膨張して腕を押し開きます。押し開いた裏に山を丸ごと包んで、この大陸とあちらの大海が繋がり一体になるパワーを取った感じがします。それは自己と宇宙のエネルギーの一体感「天人合一」なのです。按は、エネルギーを発すれば必ずそれをまた戻します。これはエネルギーの循環のプロセスです。すなわち「抱虎帰山」(虎を抱いて山へ帰る)すると、いつも太極図の原点(真ん中)に戻ります。
これが太極拳なのです。体の重心移動、猫の歩き方、円の運動、呼吸に合わせて、むらなく水の流れのような動きで転倒予防ができ、気の流れがよくなり、血行が改善できて、いろんな病の予防と治療になる訳です。医療体操だと言われています。
太極拳は実に深いものなので、私が何十年やっても、入門したばかりではないかと常に思うほど奥があるものであり、遣り甲斐があるものです。
私は一生続けていく決心で、完全に「抱虎帰山」を実現するまで頑張ります。

以上が私と私の故郷の紹介です。お話したいことはまた沢山ありますが、今回はここまでにさせてください。



雲崗石窟


平遥古城